スタジオ宙

2024年11月の記事

モノクローム折屋根のスタジオ竣工

— Garage House in Tokyo just Completed —

今回の建物は、近所にお住まいの建主のセカンドハウスとして、
室内に愛車を乗り入れて、それを眺めながらくつろげること、
またテラス部分に2台の車が停められることが設計条件でしたので、
平面計画は、まず車の軌跡や配置を考え、そこにキッチンや水回りという
生活に必要な機能を入れるということで決定しました。
そして、そこにどうやって空間の奥行きと流れを作るのかを考えたときに、
起伏に富んだ天井を作ることを思いつきました。

今回は、コンクリートを打設したそのままのプロセスを「景色」として残すことを
考え、補修はいっさいしていません。
また、現場のサポートの跡の穴を埋めたりせずに、そこにベアリングの球を
いれることで、そこに景色をうつり困るという遊びもしました。
一瞬ランダムに見える配置ですが、それらには作ったプロセスの歴史が刻み込まれ、
まるで銀河に浮かぶ星のように見えます。

また、車が美しく見えるためには、四角い箱に車を閉じ込めるのではなく、
空間内に様々なベクトルを感じられたらよいのではと思い、天井の起伏の稜線を
様々な角度に振り、空間の流れを作り出すことを考えました。

つまりこれは、ガレージハウスというのが、相応しいのかもしれません。
施主が敷地を購入したのも、公園の景色を楽しむということではなく、
道路が真っ直ぐで車が入れやすいということが理由だったようです。
ただ、実際、建物ができてみると、ピアノを入れたいとか、友人を招いて
ゆっくりしたいとか、使い方を色々考え始められているようです。

今回、建物が完成してみて発見したこととしては、車のスケールや軌跡を
中心にして設計せざるをなかったため、人間のスケールを中心に設計する
住宅建築とは少し違う空間が生まれ、かえってそこに自由な余白が生まれたように
感じました。
新築でありながら、これはコンバージョン建築で感じられるような機能と
空間のズレが生み出す開放感に似ているような気もしました。

■デザイン検討のための模型たち

■完成予想模型:公園より建物を見る

■完成予想模型:上空より建物を見る

投稿者:Yumi Kori |  建物の完成 Project Completion |  記事本文