モノクローム 折屋根のスタジオ竣工
— Garage House in Tokyo just Completed —
![](https://www.studio-myu.com/news/wp-content/uploads/images2013/IMG_4620-e1732869094129.jpeg)
コンクリート造の小さな住宅が竣工しました。
敷地は公園隣接。
緑の風景に呼応する立体アートのような存在になったらいいなあと思い、
空間の流れとシークエンスを検討する中でこの形が生まれました。
折れ曲がった壁の構成と、
山と谷を繰り返す地形のような屋根形状は内部空間と響き合い、
壁の隙間から入る光が天井や壁面に反射し、
空間は時間と共に変化していきます。
コンクリート以外の素材をほぼ使わないミニマルなデザインであることから
「モノクローム」と名前をつけました。
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この建物は近所にお住まいの建主のセカンドハウスです。
室内に愛車を乗り入れて、それを眺めながらくつろげること、
テラス部分には追加で2台の車が停められることが設計条件でした。
平面計画は、まず車の軌跡や配置を考え、そこにキッチンや水回りという
生活に必要な機能を入れるということで決定しました。
そして、そこにどうやって空間の奥行きと流れを作るのかを考えたときに、
この起伏に富んだ天井を作ることを思いつきました
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建主はコンクリートが大好きということもあり、
コンクリートを打設したプロセスを「景色」として残すことを考えました。
だから、補修はいっさいしていません。
コンクリートを打設した時にできた模様が陶芸作品の「景色」のようです。
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また、コンクリート打設時に型枠を支えるためにできた
現場のサポートを支えるための穴を埋めたりせずに記憶として残すことを考えました。
穴の跡に鏡面のステンレスの球をいれることで、
そこに光や景色を写しこむという遊びもしました。
一瞬ランダムに見える配置ですが、
まるで銀河に浮かぶ星座のように見えます。
それらには存在の必然があり、
作ったプロセスの歴史が刻み込まれています。
コンクリートを打設する前のサポートの様子がわかる写真はこちらにあります!
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さて、次に室内で車が美しく見えるためには、どうしたらいいかを考えました。
四角い箱に車を閉じ込めるのではなく、
空間内に様々なベクトルを感じられたら、
スピードを伴う動くオブジェだとして
車を鑑賞できるのではないかと思い、
天井の起伏の稜線を様々な角度に振り、
空間の流れを作り出すことを考えました。
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ただ、実際、建物ができてみると、
なんだかとても居心地がいいことがわかってきました。
刻々と変わる太陽光、
影の絵画がコンクリートに映り込み、
無機質な壁面と公園の緑の風景の対比もまた美しく感じられます。
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公園の風景を眺めながら窓辺に座っていると、
心が自由な旅をはじめます。
車を楽しむだけでなく、ここにピアノを入れたいとか
友人を招いてゆっくりくつろぎたいとか、
建主も使い方を色々考え始められているようです。
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もともとは、車を楽しむガレージハウスとして計画したのですが、
(施主が敷地を購入したのも、公園の景色を楽しむということではなく、
道路が真っ直ぐで車が入れやすいということが理由だったようです。)
実はそれがかえって功を成したというか、
そのおかげで、今回、空間に不思議な余白が生まれました。
車のスケールや軌跡を中心にして設計せざるをなかったため、
人間のスケールを中心に設計する住宅建築とは少し違う空間が生まれたようです。
新築でありながら、
これはコンバージョン建築で感じられるような
機能と空間のズレが生み出す自由な開放感といってもいいような気がします。
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シャワールームには天窓から光が落ちるデザインとしました。
光の色が時間とともに美しく移ろいます。
![](https://www.studio-myu.com/news/wp-content/uploads/images2013/IMG_4689-e1732873329524.jpeg)
キッチンも思い切ってコンクリートで打設しました。
コンクリートに切り目をいれて前に倒し
切り取られた部分が窓になったというような
ユーモアのあるデザインです。
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玄関の採光窓もコンクリートを切り欠いた形にし、
![](https://www.studio-myu.com/news/wp-content/uploads/images2013/IMG_4732-e1732873302223.jpeg)
様々な角度を感じられる空間構成としました。
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お庭は異国情緒あふれるドライガーデン。
施主が選んだ青みががった石を置きました。
引き込み式のガレージドアをあければ、室内とテラスは一体化します。
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竣工翌日の秋晴れの日、現地を訪れてみると
外壁には公園の木漏れ日が映り込み、
自然に溶けているように見えました。
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外観の傾斜壁も変化に飛んだ内部空間と呼応したかたちです。
公園とのコンクリート塀も角度をつけて傾斜させることにより、
本体とテラスとが呼応して
屋外も建築空間の一部として感じられます。
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長い一本道の先にひっそり佇む
緑につつまれた小さなガレージハウス
夜もなかなか素敵です。
天井にはあえて照明器具を設置せず、
壁や天井を照らすアッパーライトのみにしました。
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夜景を撮影している時に遠くから眺めると、
間接照明で照らされたガレージハウスの室内は
まるでシアターのように見えました。
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主要用途 : 一戸建ての住宅
構造規模 : RC造 地上1階
敷地面積 : 99.24m² ( 30.02坪)
延床面積 : 44.57m² ( 13.48坪)
設計監理 : スタジオ宙/ 郡裕美、遠藤敏也
構造設計:H&A構造研究所/平川 啓一
施工 : 篠崎工務店/篠崎省三
造園 : 株式会社岩城/ 荒川 淳良
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今回、屋根の形や壁の角度を決めるデザイン検討のために、
なんども模型をつくって形のスタディを行いました。
これらは試作のモックアップ模型たち(縮尺1/100)です。
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検討の結果、やっと決まった外観のかたち、
公園より建物を見た完成予想模型(縮尺1/50)です。
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上空より建物を見る完成予想模型はこちら。
山と谷を繰り返す、起伏に飛んだ室内の様子がわかっていただけると思います。
![](https://www.studio-myu.com/news/wp-content/uploads/images2013/GH_完成模型_屋根-3-1-e1732876808920.jpg)
投稿者:Yumi Kori | 建物の完成 Project Completion | 記事本文