YUMI KORI ART WORKS

『日常風景』 カテゴリーの記事

そらとうみのあいだ

— the Sky, the Sea, layers meet and I become transparent. —


夕焼け雲が映りこむ湖面に遊ぶ鯉の群れ。
鯉は天空を泳ぎ、水の色は刻々と変わる。
空と海がこうしてひとつに重なり、
夢の中に現れるかの幻想的な映像を見ていると
天地が逆転したような錯覚を覚え、
自分が透明になってしまったように感じる。
足下が揺らぎ、平行感覚がなくなった瞬間、
鴨が一羽、その絵画に入り込み、
映像は現実に戻った。

ニューヨークから友人が訪ねてきた折りに木場の美術館を案内し、
ついでに黄昏時の清澄庭園を訪ねた。そこで出会った風景の日記。

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トナカイの贈り物

— Reindeers on the window in Cold Winter Morning. —


2月も終わりに近づき、我が家のトナカイともそろそろお別れの季節がやってくる。このアパートメントの前の住人が、窓ガラスにトナカイのシールを貼っていたのだろう。その接着剤のあとが、毎年、冬になると窓ガラスに結露して現れる。さむいさむい冬の朝、心が少し温かくなる詠み人知らずの贈り物。春になるのは楽しみだけど、トナカイさんにあえなくなるのはちょっと寂しい。

投稿者:yumi |  日常風景 |  記事本文

動いていると見えなくて、止まっていると見えるもの、またはその反対。

— Stop Sign made me think of Time Perception. —


近所の道路に「止まれ」サインが新しく描き加えられた。長く引き延ばされ、注意深くレタリングされた「止まれ」という文字を観察していたら、私の横をすごいスピードで通り抜け、急停車する車の幻が見えた。この「止まれ」サイン。立ち止まっている私の目には明らかに間延びした文字だけど、車で走りながら見たら普通のサインに見えるはず。
でも、立ち止まってまじまじとサインを見ている私には、この文字がそんなスピードとは縁がなく、ゆっくり丁寧に描かれたことがよくわかる。それは、文字のまわりに注意深く描かれた補助線や几帳面に塗りつぶされた職人技が見えるから。
動いていると見えなくて、止まっていると見えるもの、きっとこの他にもたくさんあるんだろうな。
同じ道でも、ゆっくり歩く人、走り過ぎる人、風景はまったく違って見える。毎日あわただしく動き回っていると、知らないうちに見えなくなっているものがあるに違いない。たまには、立ち止まってスロウに生きたい。…でも、このサインの文字のように、ゆっくり歩いているとちゃんと読めない場合もある。
新しく描かれた「止まれ」サイン、単純そうだけど難易度の高いメッセージを贈ってくれた。

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エクセルで楽しむ人生の風景

— Revishioning my life through Excel chart. —

友人の紹介で、社会学者の平尾桂子氏とディナーをご一緒する機会があった。人生について仕事について、いくら時間があっても足りないほど話が盛り上がった。その中でいちばん興味深かったのは人生年表の話。以下、平尾さんの言葉。「手書きでもいいですが、エクセルをおすすめします。基本的には西暦、年齢(自分や家族)とイベントの列を作ります。今までの出来事や仕事の積み重ねを確認することもできますし、将来の目標設定と計画作りにも使えます。ローンの支払い計画や保険の見直しなどにもおすすめですね(笑)あと、クライアントのライフステージの見通しにも有効かと。子どもがいつ、いくつになるのか、表にしてみると意外と早く育つということがが分かりますので、そうした家族構成の変化に対応できる間取りを考えるとか、そんなことにも役立つかも。」ということ。
私も早速試してみた。父母が生まれた年。私が生まれた年…、大学を卒業して、建築設計事務所を始めて、ニューヨークで暮らして…。エクセルにプロットしてみると、自分の人生の時間が、窓の外の風景のように客観的に見えてくる。人生って意外と短いものだなあと実感。あと残された自分の時間、どのくらいあるのかよくわからないけれど、もっともっと楽しく生きようっと!

投稿者:yumi |  日常風景, 町で出会ったこと |  記事本文

幸せを感じる瞬間-つめきり編。

— Nail clipping made me happy in Sunday afternoon. —

暖かい日差しが降り注ぐ日曜の昼下がり。ベランダの掃き出し窓の前に新聞紙を広げる。新聞記事を読むのではない。日当たりの良い午後の光を浴びながら、つめを切るのだ。チョン、チョン?or ピン、ピン、ピン?どんな擬態語を使ったらいいのかよくわからないけれど、つめきりが潔くつめを切り離す独特の音色を楽しみながら、左手の親指から順に切っていく。静かな午後の空気に響くそのスロウなリズムをきいていると、なぜかとても平和でゆったりした気持ちになる。あっと言う間に過ぎたこの2週間あまりのことを愛おしく思い出しながら、こんな時でないと丁寧に扱ってもらえない足の小指や薬指をねぎらうように、ゆっくりと丁寧につめをきる。そして全部を切り終わると、心がリフレッシュして幸せになっているのに気づく。削り立ての鉛筆を前に感じる爽やか感とよく似た気持ちかなあ。切ったばかりの私のつめの断面が新鮮な空気に触れて、体の中に太陽の暖かさが入ってくるのを感じる。

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雪の反射で光が変わり空間が変わる。

— Snow changes the light, thus the Space is changed. —


雪が降ると町の風景が変わるだけでなく家の中の風景も変わる。たとえば私の家では、隣家の2階建の屋根がうまい具合に光の反射面となって、3階の窓に下方向からの光が入ってくる。だから、天井面がいつもよりずっと明るくなる。(あいにく私の写真技術ではなかなかそれが写らないが…。)そして、その天井に反射した間接光が部屋全体を優しく照らし、いつもは影になっている部屋の隅が息づき始め、空間の大きさまで違って感じられる。
また、直接光ではなく間接光で照らされると、家具や置物、衣類や食器など、いつも見慣れたものが新鮮に見える。室内に明らかな影がなくなり、すべてものが写真スタジオのような均質な光の中おかれ、ちょうどプロダクトの広告写真の撮影をする時のように、物そのものが純粋な美しさを取り戻すからだろうか。
さらに、よくよく観察すると、光の色そのものが違うことにも気がついた。雪で反射し拡散された太陽光は、雪の潔い白さを携えて若々しくなり、部屋の中にある物の色をビビッドによみがえらせる。
雪がちょっと降っただけで光が変わり、光が変わるといつも見慣れた空間が違ってみえる。そして、知らず知らずのうちに自分の気分まで新しく生まれ変わったように感じられる。
雪のアート効果を発見させてくれた、今年初めての東京の雪に感謝!

投稿者:yumi |  アート, 建築, 日常風景 |  記事本文

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