YUMI KORI ART WORKS

『建築』 カテゴリーの記事

昭和初期の建築:丸石ビルでの展覧会「終焉をめぐって」

— Jose Luis Farinas exhibition @ YukikoKoide, Maruishi Building —


先週末、素敵な展覧会のopening に行った。

展覧会:「終焉をめぐって」 by ホセ・ルイス・フェリイニャス
会期:2012年5月15日(火)~31日(木)
場所:小出由紀子事務所 東京都千代田区鍛冶町1-10-4 丸石ビル301
http://www.yukikokoide.com/
New York の画廊 Miyako Yoshinaga(私が一昨年展覧会をした素敵なgalleryです!)との協力企画。ハバナ出身のキューバ人アーチストの作品で、世界の創世を示唆するような暗示的な絵画が、繊細な筆遣いで描かれていた。
展覧会も良いのだけれど、小出さんの事務所のある丸石ビルの建物もまたすばらしかった。入り口に立つ2体のライオン像は、どこか生真面目さを感じさせ、なんだか日本風。若い頃のジャングル大帝レオを思いだした。時間のある方は、是非、お出かけください。

ー以下、小出由紀子事務所のWebsiteから抜粋ー
丸石ビルは1931年(昭和6年)に竣工した西洋風建築です。外壁には幡州産の黄龍石や赤龍石が用いられ、正面玄関にはライオン像が置かれています。アーチや柱頭を飾る、ロマネスク風のレリーフを楽しみながら内部に入ると、石膏彫刻を施した天井やモザイク・タイルの床など、手仕事の美しいエントランスホールが迎えてくれます。2002年、有形文化財に登録。

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町を浸食するネオンライト in New York

— Private light invade Public space to created a kind of Pulic art in NYC —

ネオンライトが歩道にはみ出し、町をどんどん侵略する。公私の境界が不思議に混じり合う夜のニューヨーク。何層にも絡み合った光のインスタレーションの中、ワクワクしながら帰路につく。これはパブリックアートの域に達しているかも…。

 

 

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「物質より関係性」脳内回路コネクトーム。

— Does the brain's wiring make us who we are? —

脳内のネットワークを表すconectome という考え方についてのシンポジウムがコロンビア大学で開催された。ハーバード大学Sebastioan Seung 教授とニューヨーク大学Anthony Movshon教授がメインゲスト。チケットはあっという間に売り切れ、300席以上もある階段教室には人があふれ、入りきれない観客が別室でサテライトされるビデオを見るというほどの大盛況ぶり。まるでロックコンサート会場のような熱気だった。参加者は老若男女バラエティーに富んでいたが、皆、目チカラが強くて頭の回転の良さそうなオーラを放っている人ばかりに見えた。一緒に行った脳科学者の友人が、会場を見回し「ノーベル賞を受賞した科学者が3人もこの観客なかに居るよ」と教えてくれた。(ちなみにこの講義室は、ペーパーチェイスという映画の舞台に使われた有名な場所)

脳の仕組みがだんだんわかるようになってきて、ニューロン(神経細胞)の詳細な接続状態を表した地図、つまり神経回路が解明されはじめ、ニューロンそのものだけでなくコネクトーム(それらの接続のされ方)によって脳の働きが決まってくるという考え方が主流になっているらしい。

建築の世界でも、物体より空間、そこで生まれる関係が重要。脳科学でもやっぱり神経細胞という物質だけでなくそれらの関係性が重要ということか…。素人の勝手な曲解で妙に納得してしまった。たまには、異分野のレクチャーを聴くのもおもしろいなー。

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正しく堆積した時間はまろやかな空間を生む。

— Ginza Okuno Building, built in 1932. —


銀座奥野ビルを訪ねた。銀座の芸術発信地として有名なビルらしいが、そんなこととは全然知らず、懇意にしていただいている編集者のMさんの事務所に伺っただけだった。ところが、建物に一歩足を踏み入れて、そのビルのもつ雰囲気に思わず感嘆の声をあげた。時間が折り重なって古びた感じが実に良いのだ。玄関のスクラッチタイルは錆感が美しく、昭和7年(1932年)に建てられただけあって、階段の手すりなどいたるところに凝った装飾が残っている。昭和初期にタイムスリップしてしまったようだ。経緯はよくわからないが、ビルは2期にわけられて2棟として建てられており、階段室の窓から別棟の階段室が見える。時間と空間が複雑な入れ子状になっているみたいで、その風景がこれまた不思議。手動の蛇腹の扉があるエレベーターは、ゆっくり丁寧に扱わないとちゃんと働いてくれないらしく、「行き先ボタンを同時に2つ以上おすと混乱しちゃうのよ。」と、半畳ほど広さのエレベーターに同乗した住人がおしえてくれた、その建物をいたわる感じの表現も新鮮だった。

7階の事務所を訪ねた後、建物内を探検することにした。Mさんが「学園祭のノリなのよね。」とコメントされたように、各室はそれぞれ実に独創的に使われていた。万年筆の修理屋さん、画廊、デザイン事務所…。いちばん小さい部屋は2メートル角ぐらいだろうか。扉を開けるごとに別世界が現れるのが楽しくて、ワクワクしながら各室を訪ねた。
Mさんに言われて気がついたのだけれど、各室の窓の前に花壇も実に良い。上階の部屋にいても土に香りがする感じ。外観をおもてから見ると、窓の前にまちまちの木が植えられている、その自由な感じも素敵だっだ。

奥野ビルにアートの風を吹き込んだ元祖だという3階のギャラリー巷房の事務所を見せていただいた。しっとりと居心地の良さそうな事務所だった。オリジナルのドアや家具が残っていて、昭和初期のロウテクだけど暖かみのある暮らしの様子がかいま見れた。木製の玄関ドアの上部には無双窓がついていて鍵を閉めたまま通風できるようになっており、3尺四方の三和土の玄関にはもともとは小さなキッチンがあったらしいが、今は小さな陶器の手洗いに変えられていた。部屋は、三和土から数センチ上がった堅木の板張り。広さは6畳ぐらいのワンルームだろうか。半間の両開き戸の押入(下部は玄関から使う下足入れ)と、天井までの作り付けの棚があった。棚の下部は折りたたみ式のベッドになっており、日中、それを隠すためのカーテンレールもあった。家具の面材はラワンベニヤ、枠材はラワンの染色。壁と天井の境目はアールの左官仕上げ、壁には半円型のニッチも残っていた。これは、奥野ビルの2期工事の時に窓がつぶされた跡だという。窓は4尺角ぐらいで、アンティックな鉄のレバーハンドルがついている細いスチール枠の両開き。素敵なデザインだったけれど、シングルガラスで隙間風もありそうで冬は寒そうに見えた。けれど、奥野ビルの住人達はそんなことは全く気にしていないどころか、むしろそれも含めて、古き良き時代のスローな暮らし方を体感する仕掛けとして楽しんでいるようにさえ見えた。

何と表現したらいいのだろう。この銀座奥野ビルでは、時間が正しく刻まれ、ちゃんと堆積している感じがした。歴史の時間がビル全体の空気をまろやかにし、そこにいる住人もみんな優しい雰囲気を醸し出していた。新築の建物にはない空間の柔らかさ、何とも言えない居心地良さ。こんな素敵な場所が銀座に隠れているなんて!東京って本当におもしろい。

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雪の反射で光が変わり空間が変わる。

— Snow changes the light, thus the Space is changed. —


雪が降ると町の風景が変わるだけでなく家の中の風景も変わる。たとえば私の家では、隣家の2階建の屋根がうまい具合に光の反射面となって、3階の窓に下方向からの光が入ってくる。だから、天井面がいつもよりずっと明るくなる。(あいにく私の写真技術ではなかなかそれが写らないが…。)そして、その天井に反射した間接光が部屋全体を優しく照らし、いつもは影になっている部屋の隅が息づき始め、空間の大きさまで違って感じられる。
また、直接光ではなく間接光で照らされると、家具や置物、衣類や食器など、いつも見慣れたものが新鮮に見える。室内に明らかな影がなくなり、すべてものが写真スタジオのような均質な光の中おかれ、ちょうどプロダクトの広告写真の撮影をする時のように、物そのものが純粋な美しさを取り戻すからだろうか。
さらに、よくよく観察すると、光の色そのものが違うことにも気がついた。雪で反射し拡散された太陽光は、雪の潔い白さを携えて若々しくなり、部屋の中にある物の色をビビッドによみがえらせる。
雪がちょっと降っただけで光が変わり、光が変わるといつも見慣れた空間が違ってみえる。そして、知らず知らずのうちに自分の気分まで新しく生まれ変わったように感じられる。
雪のアート効果を発見させてくれた、今年初めての東京の雪に感謝!

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「建築する」ことと「建築で表現する」ことのずれ感

— The gap between Construction and Expression in Architecture —

建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの“感じ” という展覧会を見に行った。建築しているのにしていないような、人工物なのに自然のようなふりをして、構築的でありながらランダムに見えるように、デザインしているのに無作為にみせ、、、。「建築する」という行為と、「建築を通して表現する」内容のずれ感を考えさせられる、不思議な展覧会だった。残念ながら展覧会は15日でおわってしまったけれど、この写真の「クラウドスケープ」という作品は、3月22日まで東京都現代美術館で体験できる。展示作品はこの温室のような建物というわけではなくて、その中に作った人工的な雲。一歩はいると粉っぽい空気にむせて咳をしているのは私だけじゃなかったけれど、機会があれば「これからの感じ」を体験してみるのもいい経験かもしれない。
東京都現代美術館 http://www.mot-art-museum.jp/

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