YUMI KORI ART WORKS

『アート』 カテゴリーの記事

秋岡芳夫展@目黒美術館

今から20年近く前、私が設計の仕事を始めた頃、自分の足の長さに合わせて椅子の足を切る運動をしている人がいるという話を聞いてびっくりした。そして、その人が作ったモノモノという店が中野にあり、そこには椅子のうえであぐらがかける日本人向けの椅子があるという話もきいた。高度経済成長の時代に育った私にとって、みんな西洋的な生活を目指し、椅子とテーブルの家具に会わせて生活を変えようとしていた日本のなかで、その話はとても新鮮に感じた。
今日、展覧会に訪れるまで、秋岡芳夫さんがその張本人だということは、ぜんぜん知らなかった。目黒美術館での回顧展、あまりにも多岐にわたる膨大な作品群にただただ目を丸くするばかり。実際に自分自身で手を動かして作ったもの(700個くらいある竹とんぼ、折り紙の動物たち、銅板画、絵本など)から、著作、プロダクトデザイン(カメラ露出計、ラジオ、車など)、グラフィックデザイン(装丁)、教育素材(科学と学習の付録)様々な道具や民芸品のコレクション。そして自分が直接手を下して作ったモノだけでなく、各地の地場産業と結びついた新しい木工民芸品の開発、そして、ものづくりをとおして、人と人、人とモノとのつながりを再構築していく活動。
そんなに忙しいのに、手を動かして竹とんぼを作るという遊び?を生涯し続けている。ひとつの竹とんぼをつくるのに約6時間かかると書いてあったので、つまりほとんど1日がかり。こんなにたくさんの仕事をしながら、よくそんな時間があるよなあ。世の中にはすごいクリエイティビティのある人がいるものだ。
秋岡さんは、おもしろいことを書いていた。「手には、単純作業をさせない。手は同じことをするのを否定する。同じことなら機械にさせろ。」まるで、手が自分とは離れた人格をもっているかのように書いている。だから700個以上もある竹とんぼ、全部かたちも働きもちがうらしい。

ともすると頭でっかちになってしまう私、もっと自分の体や手を使っって考えなくちゃと思った。

残念ながら展覧会は12月25日で終了。リンクはこちら。http://mmat.jp/exhibition/archives/ex111029

 

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ホノルルの南西380kmの海洋を新宿で楽しむ。

デイヴィッド・ボウエンのテレプレゼント・ウォーターという作品を新宿のICCで見た。
細い木材がグリッド状に組み合わされ繊細な構造物が天井から吊られ,波のように動く。この動きは,海洋上に浮遊するブイで観測される波のデータを反映したものらしく、アメリカ海洋大気圏局(NOAA)が公開するホノルルの南西約205海里(≒380km)に位置するブイのデータを利用しているという。遠く離れたの海の波の動きがほぼ1/12の縮尺で再現された作品。
こういった自然を写すだけの「翻訳」的な作品は、いつも「あっそー。それで?」という気持ちになってしまうが、なぜかこの作品は、いくら見ていても飽きがこない上に、私の心が太平洋の遠くに旅をはじめ、その宙に浮いた構造物と海が重なって見えてきた。こういう単純な作品もいいもんだなあーと思った。

展覧会情報は、http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2011/Openspace2011/Works/davidbowen2_j.html

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