YUMI KORI ART WORKS

『アート』 カテゴリーの記事

幸せを感じる瞬間-つめきり編。

— Nail clipping made me happy in Sunday afternoon. —

暖かい日差しが降り注ぐ日曜の昼下がり。ベランダの掃き出し窓の前に新聞紙を広げる。新聞記事を読むのではない。日当たりの良い午後の光を浴びながら、つめを切るのだ。チョン、チョン?or ピン、ピン、ピン?どんな擬態語を使ったらいいのかよくわからないけれど、つめきりが潔くつめを切り離す独特の音色を楽しみながら、左手の親指から順に切っていく。静かな午後の空気に響くそのスロウなリズムをきいていると、なぜかとても平和でゆったりした気持ちになる。あっと言う間に過ぎたこの2週間あまりのことを愛おしく思い出しながら、こんな時でないと丁寧に扱ってもらえない足の小指や薬指をねぎらうように、ゆっくりと丁寧につめをきる。そして全部を切り終わると、心がリフレッシュして幸せになっているのに気づく。削り立ての鉛筆を前に感じる爽やか感とよく似た気持ちかなあ。切ったばかりの私のつめの断面が新鮮な空気に触れて、体の中に太陽の暖かさが入ってくるのを感じる。

投稿者:yumi |  アート, 日常風景 |  記事本文

雪の反射で光が変わり空間が変わる。

— Snow changes the light, thus the Space is changed. —


雪が降ると町の風景が変わるだけでなく家の中の風景も変わる。たとえば私の家では、隣家の2階建の屋根がうまい具合に光の反射面となって、3階の窓に下方向からの光が入ってくる。だから、天井面がいつもよりずっと明るくなる。(あいにく私の写真技術ではなかなかそれが写らないが…。)そして、その天井に反射した間接光が部屋全体を優しく照らし、いつもは影になっている部屋の隅が息づき始め、空間の大きさまで違って感じられる。
また、直接光ではなく間接光で照らされると、家具や置物、衣類や食器など、いつも見慣れたものが新鮮に見える。室内に明らかな影がなくなり、すべてものが写真スタジオのような均質な光の中おかれ、ちょうどプロダクトの広告写真の撮影をする時のように、物そのものが純粋な美しさを取り戻すからだろうか。
さらに、よくよく観察すると、光の色そのものが違うことにも気がついた。雪で反射し拡散された太陽光は、雪の潔い白さを携えて若々しくなり、部屋の中にある物の色をビビッドによみがえらせる。
雪がちょっと降っただけで光が変わり、光が変わるといつも見慣れた空間が違ってみえる。そして、知らず知らずのうちに自分の気分まで新しく生まれ変わったように感じられる。
雪のアート効果を発見させてくれた、今年初めての東京の雪に感謝!

投稿者:yumi |  アート, 建築, 日常風景 |  記事本文

秋岡芳夫展@目黒美術館

今から20年近く前、私が設計の仕事を始めた頃、自分の足の長さに合わせて椅子の足を切る運動をしている人がいるという話を聞いてびっくりした。そして、その人が作ったモノモノという店が中野にあり、そこには椅子のうえであぐらがかける日本人向けの椅子があるという話もきいた。高度経済成長の時代に育った私にとって、みんな西洋的な生活を目指し、椅子とテーブルの家具に会わせて生活を変えようとしていた日本のなかで、その話はとても新鮮に感じた。
今日、展覧会に訪れるまで、秋岡芳夫さんがその張本人だということは、ぜんぜん知らなかった。目黒美術館での回顧展、あまりにも多岐にわたる膨大な作品群にただただ目を丸くするばかり。実際に自分自身で手を動かして作ったもの(700個くらいある竹とんぼ、折り紙の動物たち、銅板画、絵本など)から、著作、プロダクトデザイン(カメラ露出計、ラジオ、車など)、グラフィックデザイン(装丁)、教育素材(科学と学習の付録)様々な道具や民芸品のコレクション。そして自分が直接手を下して作ったモノだけでなく、各地の地場産業と結びついた新しい木工民芸品の開発、そして、ものづくりをとおして、人と人、人とモノとのつながりを再構築していく活動。
そんなに忙しいのに、手を動かして竹とんぼを作るという遊び?を生涯し続けている。ひとつの竹とんぼをつくるのに約6時間かかると書いてあったので、つまりほとんど1日がかり。こんなにたくさんの仕事をしながら、よくそんな時間があるよなあ。世の中にはすごいクリエイティビティのある人がいるものだ。
秋岡さんは、おもしろいことを書いていた。「手には、単純作業をさせない。手は同じことをするのを否定する。同じことなら機械にさせろ。」まるで、手が自分とは離れた人格をもっているかのように書いている。だから700個以上もある竹とんぼ、全部かたちも働きもちがうらしい。

ともすると頭でっかちになってしまう私、もっと自分の体や手を使っって考えなくちゃと思った。

残念ながら展覧会は12月25日で終了。リンクはこちら。http://mmat.jp/exhibition/archives/ex111029

 

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ホノルルの南西380kmの海洋を新宿で楽しむ。

デイヴィッド・ボウエンのテレプレゼント・ウォーターという作品を新宿のICCで見た。
細い木材がグリッド状に組み合わされ繊細な構造物が天井から吊られ,波のように動く。この動きは,海洋上に浮遊するブイで観測される波のデータを反映したものらしく、アメリカ海洋大気圏局(NOAA)が公開するホノルルの南西約205海里(≒380km)に位置するブイのデータを利用しているという。遠く離れたの海の波の動きがほぼ1/12の縮尺で再現された作品。
こういった自然を写すだけの「翻訳」的な作品は、いつも「あっそー。それで?」という気持ちになってしまうが、なぜかこの作品は、いくら見ていても飽きがこない上に、私の心が太平洋の遠くに旅をはじめ、その宙に浮いた構造物と海が重なって見えてきた。こういう単純な作品もいいもんだなあーと思った。

展覧会情報は、http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2011/Openspace2011/Works/davidbowen2_j.html

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