ドアのデザイン=空間のデザインをすること。
— Designing Door means Designing Space and Experience. —
「リビングに入るドアのデザインどうしたらいいかしら?」久しぶりにあった友人に相談された。現在、ボストンで自宅の改装中ということ。しかし、ドアのデザインのアドバイスというのは、結構むつかしい。もちろん、ドアは面だからグラフィックのように面的なデザインをすることができる。でも、ドアはその向こうにある部屋の気配をどのくらい感じさせるかという、空間を考慮してデザインするべきだ。さらに、ドアは、こちら側と向こう側の世界をつなぐものだから、時間を伴う空間認識の発想をもってデザインをする必要がある。…つまり、ドアのデザインをするということは、面であり、空間であり、時間のデザインをするということである。
これは、私が以前、改装設計させていただいたH邸のリビングの写真。居間の一角にあるドアをどんなデザインにするべきか、悶々と悩んだ。結果、梨地のようなタペストリーガラスのミニマルな引戸にすることに。あえて面的なデザインをするのはやめて、枠や取っ手などのデティールを消した。そして、光を柔らかく通し、むこう側の世界に淡いあこがれと、物語の予感だけを感じられるような、そんな空間感のあるドアを提案した。