織物の町の蔵で考えたこと
ここが織物の町だって知らなかった。歴史を読んでみると、古代から美しい絹の織物がたくさん作られていたという。そんなことを聞きながら、町の中に残る古い蔵に案内された。暗く急な階段を登って上階に上がっていくうちに、昔、おばあちゃんから聞いた蚕小屋の話を思い出した。昔はどの家でも屋根裏の暗いところに蚕さんを飼っていて、夜の間ずっと桑の葉を食べる音を聞きながら眠ったそうだ。闇の中で美しい糸を吐き出していく蚕のことを思いながら夜を過ごした子供の時の思い出を話してくれた。
ここで、どんな作品を作ろうか、、、
考えているうちに、なぜか、以前オーストリアの教会の地下で作った作品が頭によぎった。
透明の風船を床に敷き詰め、上部から光の筒をたらすと、
光の糸が風船の表面に映り込み、それが幾重にも重なってゆき、銀河のような世界ができた。
人が動くたび、空気の動きとともに、光の糸もゆらゆら揺らぐ。
これが闇の中で息づく蚕の繭のイメージと重なった。
https://www.studio-myu.com/art/works/works-data-folder/krems.html
美しい糸が闇の中でどんどん生まれていき、それが織られて布となる。
そんなイメージを思っていたら
とおい昔にNew Yorkで作った透明な糸の作品を思い出した。
Sound Artist のBernhard Gal さんとのコラボレーションで作ったDefragmentation Blueという作品だ。
闇の中に浮かぶ光の糸の間で、来場者が自由に時間を過ごすインスタレーション 。
ビデオが残っているので、ここで披露したい。
新しいインスタレーション作品を生み出す時、いろいろなイメージが頭の中を通り過ぎていく。
これらのイメージがずっと最後の作品まで残る場合もあるし、そうでない場合もある。
さあ、これから新しい作品作りの旅に出る。