Beyond the Wall
House in Nipponbashi, Osaka, Japan, 2021
2021.7.3 - 9.26
Installation by Yumi Kori
2020年より続いたパンデミック下、ステイホームやソーシャルディスタンスが推奨され、他人とのコミュニケーションを絶つ生活が続いた。新しい生活様式の中で、人々は自分の部屋に閉じこもり、世界とのリアルな繋がりが希薄になっていった。しかしそのようなコロナ禍で、私たちが感じていた閉塞感は物理的な壁のせいではなく、自分や社会が作る「見えない境界」に閉じ込められている感覚だったような気がする。この展覧会では、そんな見えない「境界」について再考し、閉塞感の中にまどろんでいた私たちの身体が覚醒することを企てた。壁はそこに本当に存在するのだろうか?突き当たりだと思っている先に、本当は隠れた広がりがあるのではないだろうか?非常事態宣言が解除された世の中で、この展覧会が、各々の「見えない壁」を越えるきっかけとなる。
会場の「ギャラリー日本橋の家」は、安藤忠雄氏が設計した4階建ての住宅で、立体中庭や3層吹き抜けの階段リビングがある迷路的な建築だ。現在はギャラリーとして利用されている。今回の展覧会では、空間に合わせて再構成した旧作4点に加え、新作3点を展示。開期中には郡裕美によるレクチャーやゲストを招いてのトークセッションも行った。
微睡 / madoromi
マテリアル:日本橋の家、自然光
床のガイド線に従ってゆっくり歩き、壁に自分の影が映り込み焦点があったところで立ち止まってください。自分の影をじっと見つめ、おもての車や通行人が通るたび、太陽が雲に隠れるたびに、自分の影の色と形が変化するのを確認し、自分の輪郭が揺さぶられる感覚を楽しんでください。
MON / Portable Infinity Device / Green
マテリアル:アクリル、ミュージアムボード
これは、持ち運びできる携帯無限装置です。小さな箱の中に、光と陰で無限の空間を作りました。光の門を覗き込んでください。どんなに小さな場所にでも無限の広がりが生まれます。
壁の向こうへ / Beyond the Wall
マテリアル:ミクストメディア、LED
紙飛行機は弱いものですが、誰でも簡単に作れます。外と繋がりたいという強い意思があれば、誰でも簡単に境界を突破できるというメッセージを込めて、今回、すりガラスの壁に紙飛行機を貫通させる作品を作りました。ゆっくり点滅する緑の光が壁を貫通し、紙飛行機は加速度をまして壁の向こうへ飛び立ちます。
うたたね / utatane
マテリアル:木材、土、アクリル
壁の向こうに広がるのは果てしない世界です。ブラジルの古都サルバドール近くのイタパリカ島で撮った映像、そこで録音した波の音を素材に作ったインスタレーションです。桟橋を歩く感覚、土の香りを楽しむ感覚、リアルと想像力をリンクさせ、海と空が交互に入れ替わるインスタレーションで、世界とつながる感覚を感じてほしいと思い作りました。
松風 / Matsukaze
マテリアル:手吹きガラス、電極
ニューヨークのUrban Glassに招待作家として滞在した折に作った作品です。ガラスの中の空気は、一度そこに閉じ込められると、そこに別世界を生み出します。ガラスが壊れない限りその世界は永遠に続きます。透明で見えない壁の向こうにある別世界に心を馳せる感じが好きです。お茶席で、鉄瓶にお湯がたぎる音を松風と言います。その音に似ていることからこの作品をMatsukazeと命名しました。ガラスの中の青い光の筋を見ながら、遠い松林の間を抜ける風を想像する、そんな心の旅を楽しんでください。
見えない壁 / Invisible Wall
マテリアル:毛糸、木材、ポリプロピレン、紙、ミラー
私たちは、そこに壁があったことさえいつの間に忘れてしまい、壁の向こうに思いをはせることをしなくなっています。そこにあるけど見えにくくなっている壁をまず発見しなければ、壁の向こうへ行くことさえできないのです。この作品は、ヨーコ・オノへのオマージュです。
見える? / Can you see?
マテリアル:アクリル、ミュージアムボード、砂利、ミラー
小さな空間の中に光と影を使って、無限の広がりを創り出しました。光の無限、影の無限 2つが一つの作品に埋め込まれています。光の向こうにある世界、影の向こうにある世界、それぞれを凝視する時、心はどんな旅をはじめるでしょう。「見ようとすること」を通して、光と闇の狭間にある無限の広がりを再考してみました。
協力:株式会社越智工務店 / 小山電業株式会社 / 株式会社社寺森組
協賛:総合資格学院 / DNライティング株式会社 / 大昭和紙工産業株式会社 / 株式会社菱晃 / 株式会社中川ケミカル