スタジオ宙

モノクローム 折屋根のスタジオ竣工

— Garage House in Tokyo just Completed —

コンクリート造の小さな住宅が竣工しました。
敷地は公園隣接。
緑の風景に呼応する立体アートのような存在になったらいいなあと思い、
空間の流れとシークエンスを検討する中でこの形が生まれました。
折れ曲がった壁の構成と、
山と谷を繰り返す地形のような屋根形状は内部空間と響き合い、
壁の隙間から入る光が天井や壁面に反射し、
空間は時間と共に変化していきます。
コンクリート以外の素材をほぼ使わないミニマルなデザインであることから
「モノクローム」と名前をつけました。


この建物は近所にお住まいの建主のセカンドハウスです。
室内に愛車を乗り入れて、それを眺めながらくつろげること、
テラス部分には追加で2台の車が停められることが設計条件でした。
平面計画は、まず車の軌跡や配置を考え、そこにキッチンや水回りという
生活に必要な機能を入れるということで決定しました。
そして、そこにどうやって空間の奥行きと流れを作るのかを考えたときに、
この起伏に富んだ天井を作ることを思いつきました

建主はコンクリートが大好きということもあり、
コンクリートを打設したプロセスを「景色」として残すことを考えました。
だから、補修はいっさいしていません。
コンクリートを打設した時にできた模様が陶芸作品の「景色」のようです。

また、コンクリート打設時に型枠を支えるためにできた
現場のサポートを支えるための穴を埋めたりせずに記憶として残すことを考えました。
穴の跡に鏡面のステンレスの球をいれることで、
そこに光や景色を写しこむという遊びもしました。

一瞬ランダムに見える配置ですが、
まるで銀河に浮かぶ星座のように見えます。
それらには存在の必然があり、
作ったプロセスの歴史が刻み込まれています。

コンクリートを打設する前のサポートの様子がわかる写真はこちらにあります!

さて、次に室内で車が美しく見えるためには、どうしたらいいかを考えました。
四角い箱に車を閉じ込めるのではなく、
空間内に様々なベクトルを感じられたら、
スピードを伴う動くオブジェだとして
車を鑑賞できるのではないかと思い、
天井の起伏の稜線を様々な角度に振り、
空間の流れを作り出すことを考えました。

ただ、実際、建物ができてみると、
なんだかとても居心地がいいことがわかってきました。
刻々と変わる太陽光、
影の絵画がコンクリートに映り込み、
無機質な壁面と公園の緑の風景の対比もまた美しく感じられます。

公園の風景を眺めながら窓辺に座っていると、
心が自由な旅をはじめます。
車を楽しむだけでなく、ここにピアノを入れたいとか
友人を招いてゆっくりくつろぎたいとか、
建主も使い方を色々考え始められているようです。

もともとは、車を楽しむガレージハウスとして計画したのですが、
(施主が敷地を購入したのも、公園の景色を楽しむということではなく、
道路が真っ直ぐで車が入れやすいということが理由だったようです。)

実はそれがかえって功を成したというか、
そのおかげで、今回、空間に不思議な余白が生まれました。
車のスケールや軌跡を中心にして設計せざるをなかったため、
人間のスケールを中心に設計する住宅建築とは少し違う空間が生まれたようです。

新築でありながら、
これはコンバージョン建築で感じられるような
機能と空間のズレが生み出す自由な開放感といってもいいような気がします。

シャワールームには天窓から光が落ちるデザインとしました。
光の色が時間とともに美しく移ろいます。

キッチンも思い切ってコンクリートで打設しました。
コンクリートに切り目をいれて前に倒し
切り取られた部分が窓になったというような
ユーモアのあるデザインです。

玄関の採光窓もコンクリートを切り欠いた形にし、

様々な角度を感じられる空間構成としました。

お庭は異国情緒あふれるドライガーデン。
施主が選んだ青みががった石を置きました。
引き込み式のガレージドアをあければ、室内とテラスは一体化します。

竣工翌日の秋晴れの日、現地を訪れてみると
外壁には公園の木漏れ日が映り込み、
自然に溶けているように見えました。

外観の傾斜壁も変化に飛んだ内部空間と呼応したかたちです。
公園とのコンクリート塀も角度をつけて傾斜させることにより、
本体とテラスとが呼応して
屋外も建築空間の一部として感じられます。

長い一本道の先にひっそり佇む
緑につつまれた小さなガレージハウス
夜もなかなか素敵です。
天井にはあえて照明器具を設置せず、
壁や天井を照らすアッパーライトのみにしました。

夜景を撮影している時に遠くから眺めると、
間接照明で照らされたガレージハウスの室内は
まるでシアターのように見えました。

主要用途 : 一戸建ての住宅
構造規模 : RC造 地上1階
敷地面積 : 99.24m² ( 30.02坪)
延床面積 : 44.57m² ( 13.48坪)

設計監理 : スタジオ宙/ 郡裕美、遠藤敏也
構造設計:H&A構造研究所/平川 啓一
施工 : 篠崎工務店/篠崎省三
造園 : 株式会社岩城/ 荒川 淳良

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今回、屋根の形や壁の角度を決めるデザイン検討のために、
なんども模型をつくって形のスタディを行いました。
これらは試作のモックアップ模型たち(縮尺1/100)です。

検討の結果、やっと決まった外観のかたち、
公園より建物を見た完成予想模型(縮尺1/50)です。

上空より建物を見る完成予想模型はこちら。
山と谷を繰り返す、起伏に飛んだ室内の様子がわかっていただけると思います。

投稿者:Yumi Kori |  建物の完成 Project Completion |  記事本文

軽井沢の別荘_実施設計完了しました。

— Completed the Design of Karuizawa Weekend house —

様々な設計案を検証し、打ち合わせを重ねながら、やっとこの折れ曲がり案にたどりつきました。

地形に寄り添いながら、自然の風景を満喫するかたちです。

上から見ると鳥の翼のようにみえます。

完成予想模型、背景に森の映像を投影したら、緑に包まれた空間が現れました。

投稿者:Yumi Kori |  設計のプロセス Design Process |  記事本文

軽井沢の別荘計画_設計のプロセスです。

— Design Process of Weekend House in Karuizawa.  —

A案 十字案

建主が敬虔なクリスチャン。

静けさのなかでの、祈りの空間を提案しようとおもい、

最初に十字架の形をしたプランを提案しました。

家のどこにいても、いつも自然との繋がりを感じられ、緑を感じられる設計提案です。

B案 片流れ案

部屋通しのつながりを感じられる吹き抜けを持つ空間提案です。

住まいのどこにいても家族の気配が感じられる、おおらかな大屋根のデザイン提案です。

C案 扇案

地形に寄り添う形の設計提案です。

地形に寄り添って緩やかなカーブをもったデザイン、

自然との一体感を感じる空間です。

D案 大屋根案

大きな方形の空間です。2階建にすることで、基礎の面積が減り、土工事も減ります。

回遊性のあるプランです。

このようにして、設計のプロセスでは様々な設計提案を作り、

打ち合わせを重ねる中で、最も相応しい平面、断面計画を見つけます!

投稿者:Yumi Kori |  設計のプロセス Design Process |  記事本文

「モノクローム」現場進行中

— Monochrome House under construction —

コンクリート打ち前の型枠と配筋の検査に行きました。
武蔵野のはなれ モノクロームは、
平行と直角のない建物
模型やコンピューターで何度も検討した形と角度、
現実に見ると迫力がすごい。
屋根は地形の盛り上がりに見え、
思わず登りたくなる。

屋根面を支えるための型枠支保工
地形を霜柱のように支える
型枠の隙間から差す現場の光が眩しい。

投稿者:Yumi Kori |  工事の様子 Construction Site Diary |  記事本文

武蔵野のはなれ「モノクロム」模型公開

— Completed Model ─Monochrome House Project @Tokyo —

コンクリート造の小さなスタジオ型住宅の実施設計が完了しました。 

私たちが以前、武蔵野に設計した住宅の「はなれ」として使われる予定で、コンクリート以外の素材を使わないミニマルなデザインであることから「モノクロム」という仮称をつけました。

今回の敷地は公園隣接。公園の風景に溶け込む立体アート作品のような存在になったらいいなあと思い設計しました。

デザイン検討を重ねてデザインを進めるプロセスは、こちらをご覧ください。

──敷地西側より建物を見る。

この建物は、XYZ方向に自由に線と面が折れた多面体で、外観は見る方向によって全く異なり、室内空間も変化に富んでいます。

まずは外観写真をお披露目します。

──敷地南側(前面道路)より建物を見る。

前庭に面した大開口は、パンチングメタル貼りの3枚ガラス引戸。扉を開け放てば、写真のように前庭とつなげて使えます。

──敷地東側より建物を見る。

隣地側の壁面には窓らしくない不定形の開口があり、、、

──敷地北東側より建物を見る。

敷地の角から建物を少し控え、2枚の壁の「隙間」としての窓があります。

──敷地北側より建物を見る。

そして北面は全く開口のない壁。

──敷地北西側(公園)より建物を見る。

玄関から入って空間の一番奥にはもう一つの「隙間」のような窓。公園に面するこの窓からは、緑が垣間見え、採光や通風にも有効です。



──上空より建物を見る。

山と谷を繰り返す地形のような屋根形状は内部空間と呼応していて、空間の流れとシークエンスを検討する中でこの形が決まりました。人の動線と視線の流れに従って、次々と変化のある空間ボリュームが立ち現れます。

壁の隙間から入る光が、室内の折れ曲がった天井や壁面にどのように反射し、

また、それらが時間の移ろいと共に変化していくのか、

実物が出来上がるのが楽しみです。

多面体、光、反射、隙間、亀裂など、さまざまなキーワードを重ねながら、

都市の中に自由に広がるリエーティブ空間を提案するチャレンジです。


プロジェクトはこれより施工に入ります。その様子もアップしていきますので、楽しみにしていてください!



投稿者:admin |  設計のプロセス Design Process |  記事本文

既存コンクリートを楽しむリノベ完成

— Exposed Concrete Wall, Apt Renovation Completed —

マンションの最上階の天井を開けてみると、天井は高くて家形の屋根に沿って傾斜していた!

(昔の建物だから、マンションでも家っぽいデザインにするために最上階は傾斜屋根にしていたのかな?)

そこで、天井に杉板を貼ることに。

そして、間仕切りは全て取り払ってニューヨークロフト風に。

都市の真ん中に、不思議な小屋空間が出現しました!

リノベーションの工事を進めるプロセスは、こちらをご覧ください。

写真に写っている家具を組み立てた学生ワークショップの様子は、こちらをご覧ください。

投稿者:admin |  建物の完成 Project Completion, 設計のプロセス Design Process |  記事本文