| Defragmentation/ white (ディ・フラグメンテーション・ホワイト)
は、音と光を使って、空間そのものをひとつの作品とする、サイト・スペシフィック・インスタレーションです。サイト・スペシフィック・インスタレーションというのは、その場所でしかあり得ない、あるいは、その場所そのものを作品とするタイプのアートです。ここでは、ギャラリーの中に展示されたアート作品を客観的に見るのではなく、作品そのものの中に身を置いて作品を体験します。
ウイーンに在住する音楽心理学者でもあり、サウンド・アーティストでもあるベルナルド・ガル氏とともに、Defragmentationというシリーズで、4年前からインスタレーション作品を作り続けています。Defragmentationのコンセプトのベースに流れているものは、「経験を通
して断片的に認識された場所の記憶を、自らの中で織りあげることによって、空間や時間が存在しはじめる。」という考え方です。
昨年ニューヨークで行ったDefragmentation/ blue は、死に至る闘病生活を父とともに過ごした病院での体験をもとにしてつくった作品です。病院では、蛍光灯の光の中、全てのものが白く平たく映し出され、食事、検温、血圧等の検査が、入院生活の時を刻むように繰り返されます。しかし、そこに長期滞在するうちに、時間はただ動いているだけで、進んでいるようには思えなくなってきました。次第に時間の感覚も空間の感覚も薄れ、自分の存在の平衡が失われていき、ちょうど、ずっと着地しないまま飛行機に乗り続けているような、あるいは、砂漠の中で道を見失って、歩いても歩いてもどこにも行き着けないで途方に暮れているような感覚でした。そして、父の死の瞬間が訪れた深夜、世界は完全な静けさに包まれました。その時、時間はその流れを止めたかのように思われ、また同時に、もしかしたら、もともと時間は流れていなかったのではなかったかという不思議な感覚にとらわれました。
Defragmentation/ white は、前作のDefragmentation/ blue を展開した形のインスタレーションです。音楽は、ガル氏によって作曲されたDefragmentation/
blue を使っています。鑑賞者は、外からこの空間(時間)作品を鑑賞した後、柔らかな光のひだの中に入っていゆきます。空間は、時を刻むかのように等分節されており、鑑賞者は、空間のひだのなかに無限に拡がる白い刻の中を彷徨います。また、心電図の計測音と人の呼吸音をモチーフにした始まりも終わりもない瞑想的な音楽が、時間と空間の境界を曖昧にし、ギャラリーはその物理的な大きさを越え、永遠の時の流れのなかに存在しはじめます。
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